畳のこだわり・ご挨拶
産地視察
いぐさの最大産地、熊本へ
国産のいぐさは、植え付け・刈り取り・製織まで、いぐさ農家さんが一貫して作られています。畳屋は、いぐさ農家さんが織られた畳表を仕入れ、職人が床に縫い付け「畳」に仕上げていきます。
畳づくりの技を磨くことはもちろん大事ですが、いぐさについてよく理解することも畳屋として大事だと考えています。そのため、いぐさの最大産地である熊本を訪問し、農家さんの実情を、目で見て、体験を通して肌で感じるようにしています。
いぐさに折れがないかの確認を農家さんで体験。畳に使われるいぐさは数千本。農家さんは、このように1本1本確認する。
いぐさを織る機械(織機)縦につり下がっているのが糸。いぐさを数千本織り込むと、畳表(畳の表面部分)になる
織機の織り込み動作に耐えられるよう、いぐさへ霧吹きする。霧吹きの加減で、畳の色味に差が出てくる。
織られている最中のいぐさ
産地を訪問し、農家さんの仕事をご一緒させていただくことで感じる苦労やこだわり。農家さんの仕事は、苗づくりから土づくり、植え付け、刈り取り、選別、製織など、冬~夏にかけて工程が多岐にわたります。
その工程の中でのいぐさ作りは、農家さんによってこだわりがあります。天候を気にかけながらのいぐさ作りや、農家さんからお話を伺ったいぐさへの配慮は、良い畳を作る上でも勉強になります。
冬のいぐさ。根を張る時期。
植えたら終わりではなく、約15反の田んぼを1日何回も見回って生育状況を見る。
農家さんが朝から晩までいぐさに向き合い、こだわりを持って作られたいぐさは、実が詰まっていて、ツルっとした美しい畳表に仕上がります。
夏に刈り取っているいぐさ。泥に染め、乾燥させることで落ち着いた青々とした色味になる。
仕入れる畳表。畳屋は、この両端を切って、畳に仕上げていく
そんな畳表を仕入れ、良い畳を手に届きやすい価格で多くの方に届けるため、農家さんの苦労に負けじと畳屋としてできる限りの節減を泥臭くしています。
エアコンをできるだけ使用せず、畳づくりの過程で出るゴミを再利用。工房内の備品も手作りしています。良質な畳で、自然のやすらぎを感じてください。
熊本県 いぐさ農家 上本さんと
当たり前を大切にした畳づくり
このページをご覧いただき、ありがとうございます。
長文だらけですみません。お時間がありましたら、ぜひ続きをお読みください。
五十嵐畳店は、昭和40年に初代(祖父)が創業した畳店です。
15歳に新潟県にある畳屋に弟子入りし、21歳に上京し、25歳の時に開業しました。
初代から受け継いだ技術で、畳文化を残すべく、日々活動しています。
当店では、1枚1枚、機械と手作業を駆使し、自社で制作しています。
なぜなら、同じ6畳でも、住宅によって僅かにサイズが違うからです。
技術の高い大工さんでも、1ミリのズレなく完璧に図面通り作られているわけではありません。
また、経年によってわずかにお部屋が歪んでいることもあるからです。
お部屋の歪み、例えば、コーナーの角度、壁の反り、柱の出っ張り、わずかな出っ張り。
ぱっと見ただけではわからない誤差があります。
その誤差を寸法で見える化し、手作業で微調整をしていきます。
畳づくりの過程も、経験による裏付けが求められます。
縁つけや、いぐさに水を吹きかける加減、畳表(いぐさ)が割れないように折り曲げる作業も手作業です。
この水を吹き掛ける加減も、機械ではできないからです。
もちろん、機械で作る工程もあります。ですが、機械は畳の状態を考慮して作ることはできません。例えば、機械で畳表をピンと張る作業。その加減の調整は一定ではなく、使用するいぐさのランク(質や厚みなど)や、畳の床(芯)の傷み具合を見ながら補修して作る必要があります。床の傷み具合は、和室の使い方によって違いますし、いぐさは植物ですから育て方・生育状況や品種・厚み・長さ・質に違いがあります。工業製品ではありませんのですべて同じ品質ではありません。
上記を踏まえた畳づくりは、職人の経験が必要です。
こうした細部の微調整をすることで、お部屋に合う畳ができあがります。
機械のみで細部を気にせず大量生産をすれば、畳床の寿命低下、スキマや段差ができてしまい、
スキマがあれば畳が動きやすくなります。段差があれば、畳がスレやすくなります。
毎日使う畳ですから、結果、傷みやすく長持ちしなくなってしまいます。
ホコリも溜まりやすく、不衛生になってしまいます。
ですから、大量生産ではなく、1枚1枚、
お部屋にあわせた畳を作り上げます。
作り手によって品質ムラが出ないよう、少数精鋭で。
昔であれば、当たり前だった細部のこだわり、微調整の技術を継承しています。
この細部のこだわりが、普段何も気にすることなく、くつろげる畳空間になるのだと考えています。
張り替えたあとは、部屋が明るく、気分も明るい。香りも肌ざわりも気持ちよくて快適。
訪れる人、お子さん、友人、ご夫婦、祖父母へのプレゼントです。
畳は、日常の何気ない、心地よい暮らしの引き立て役として畳があると思っています。
こうした引き立て役になるために、正直に、丁寧に畳を作っております。
口数は少ないですが、その想いを心に秘めて畳づくりをしております。
日本の畳文化をいつまでも。
みなさまは、アジアや欧州などの旅行で印象に残ったことはございますでしょうか。
観光施設や観光地、ご当地グルメを楽しむことはもちろん、その国の聞き慣れない言葉を聞いたり、独特の街並みを歩くだけで楽しかった思い出もあるのではないでしょうか。
きっと、日本に訪れる海外旅行者も同じ気持ちで、
「日本の街並み」「日本ならでは」を楽しんでいるのだと感じます。
日本の文化を味わえる京都を代表格に、景観・文化を楽しみに多くの海外旅行者が賑わっています。
日本に人気がある理由は、まさに「日本らしさ」「日本ならでは」を体験できる事にあります。日本らしさを感じられる伝統的建造物と、部屋に敷かれた畳。アメリカでは靴を脱がない文化があるように、日本では靴を脱ぎ寛ぐ文化。日本食、日本文化を味わいたい旅行者。だからこそ畳は、日本らしさに欠かせないものだと考えております。
約1000年にわたって使われ続けている畳。
平安時代には貴族の邸宅に使用され、室町時代には茶室として、江戸時代には庶民に浸透してきました。長い歴史の中、日本の生活を支えてきたからこそ、部屋の広さの基準となっている単位「〜畳」。
しかし、洋風化や時代の変化とともに、日本のDNAとも言える畳が減ってきています。時代が目まぐるしく変化している今、畳文化を存続させる為には、畳も変化しなければなりません。昔ながらの伝統的な畳のみに固執せず、畳も時代に合わせなければなりません。
まずは、良質な畳をみなさまに届け、畳の心地よさを実感していただけるよう、日々、畳に丹精を込めます。畳だからこその肌ざわりや香り。畳部屋の思い出。なんだかやすらぐ癒しを通じて、充実した「何気ない日常」をお届けする。そのために、従来にとらわれない新しい啓蒙を検討し、畳の再認知を模索していきます。
自然が育んだ大地の恵み。無意識に気持ちが落ち着いていく畳。日本を象徴する畳の文化が後世に残るよう、これからも畳という自然の恵みを、暮らしのそばでご愛用いただければ幸いです。
代表取締役社長